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しっくいと珪藻土の時間
- 自然素材度は漆喰
漆喰も珪藻土もビニールクロスと比較して、自然素材であるという点が大きな評価のポイントになりますが、この点で申しますと漆喰の方がより自然素材です。なぜかと言えば、珪藻土は藻類の一種である珪藻が堆積したもので、それ自体には粘着性がないために、化学合成樹脂などの接着剤や固化剤が必要になるからです。漆喰は石灰が主原料で漆喰自体に粘着性があるため、基本的に接着剤や固化剤は不要なのです。
基本的にと申しましたのは、漆喰も大きく分けて二つに分かれるのですが、少し性質が変わります。一つはホンマものの漆喰です。左官屋さんが海草をグツグツたいて麻のスサをまぜて石灰を足していきながら作っていく昔ながらの漆喰です。本じっくいと言います。これは文字通り自然素材で接着剤や固化剤は入っておりません。
ところが近年は材料づくりの段階でこのような手間をかけることを敬遠し、メーカー品の袋詰めされたもので、水で溶くだけで使える漆喰を施工することが主流になっており、現在、漆喰と言うとこの漆喰のことを差します。我々は「袋もんの漆喰」と呼びます。これはメーカーによって接着剤や固化剤が入っているものもあり、その意味では珪藻土と変わらないものもあります。
- 調湿効果は珪藻土
次に調湿効果ですが、これは珪藻土に軍配があがります。漆喰にも調湿効果はあるのですが、珪藻土のほうがより調湿効果が高いとご理解くださるといいかと思います。JISの「調湿性能評価基準」では、1㎡あたり24時間で70g以上調湿することが調湿建材の条件になります。一般的に漆喰の調湿性能は1㎡あたり24時間で40g程度の調湿性能があるとされていますので、確かに調湿はするけれど、JIS規格では調湿建材とは認められないということになります。対して珪藻土はもちろん品物にもよりますが、同条件で200g程度の調湿性能があり、これは漆喰の5倍程度の調湿効果であり、JIS規格の3倍程度の調湿効果が期待できます。
- 抗菌・防カビは漆喰
くどいですが、漆喰も珪藻土も自然素材なので、健康のために空気環境に対する効果も期待されます。漆喰は強アルカリ性で強い抗菌効果があり、カビや細菌を分解します。カビや細菌が減るということはハウスダストによるシックハウスが減るということが考えられます。また、これによって消臭効果も高いのです。これに対して珪藻土には抗菌効果はなく、結露などをするとカビも生えやすいのが欠点です。
- VOC・ホルムアルデヒドは漆喰
また漆喰はVOCの中でもやっかいなホルムアルデヒドを吸着して分解することができます。これももちろん、化学物質過敏症の抑制に効果があります。珪藻土にはこのような効果はありませんので、先ほどの抗菌効果と合わせて考えても、健康志向という観点からは漆喰の方がすぐれていると言えます。
- 耐久性・強度は漆喰
漆喰の原料となる石灰は空気中のCO2に反応して硬化し、元の石灰石の硬さに戻っていくという性質があります。左官材料として壁に塗ってからも年々硬くなっていくのです。これに対して珪藻土は表面が柔らかくポロポロと崩れて落ちやすいので、耐久性や強度でも漆喰が優れています。漆喰は外壁にも使うことができますが、珪藻土は屋内でしか使うことができません。しかし、実はこの作用によって漆喰の調湿効果は年々落ちていきます。いいことばかりでもないわけです。ちなみに珪藻土の調湿効果はいつまでも維持されます。
もう少し詳しく話しました